コラム

■第7回 ミニ大塚家具騒動のメカニズム  北原慎一郎

 大塚家具のお家騒動は大きな反響を呼んだが、中小企業における「ミニ大塚家具騒動」は決して珍しい話ではない。今回は、そんな騒動が起きるメカニズムを考えてみたい。勿論その背景は多様ではあるが、かなり思い切った仮説を立て考えてみることにする。

 現経営者(父親)は、「自分はかつて地獄を見ている。例えば創業期に、あるいは承継前後に、そして人には言えない苦労の末に地獄から抜け出し現在に至っている(①)。会社の今後がどうなるかは分からない、少なくともこれまでより厳しくなるのは確かだろう(②)、しかし、どんな厳しい時代になっても自分はそこから抜け出すことはできる。なぜなら、自分はあの地獄から抜け出してきたんだから(③)、でも、息子にはその地獄体験がない。経営の厳しさが分かっていない。それが漠然とした不安を生む(④)、だから、息子を甘やかすことはできない。褒めたりすれば、これで充分だと力を抜いてしまうだろう。息子のためにも甘やかすわけにはいかない(⑤)。」父親はそう考えるものである。

 後継者(息子)は、「親父を尊敬している。毎日のなかで「親父はスゴイ」と実感している(❶)。将来だって自分はアァはなれないだろう。自分はとても親父にはかなわない(❷)。それでも自分は自分なりに頑張っているつもりだ(❸)。でも、親父は自分が何をやっても、何ひとつ認めてくれない。今の自分が合格点だとは思わないが、少しは認めてほしい(❹)。こんなことが続くと心が折れてしまう。どうしてコミュニケーションすら成り立たないんだ。自分の考えを押し通そうなんて思っていない。具体的なことで、もっとかみ合った議論がしたい。なのにいつも頭ごなしで議論にならない。」息子はそう考える。

 では、どうしたらそんなコミュニケーションを改善できるのだろうか。以前実際にご支援した例を示そう。社長と常務で1時間にわたり、あるテーマで議論してもらった。自分はあえて調整には入らなかった。さらにお二人の了解を頂いて録音もした。はじめ社長は「常務ねえ」といった調子で話していたが、10分も経つと「お前ねえ」と変わる。確かに議論が成り立たない。1時間の議論をすべて文字おこしした。次の回にはお二人と個別に会い、それを読んでもらい、感想を聞かせてもらった。さらに社長には常務がなぜこのように発言するのかを類推してもらい、常務には社長がなぜそのように発言するかを想像してもらった。客観的に示されると気づく、相手の気持ちに立つことも出来る。そんな効果はある。

 勿論、感情的な行き違いが一度の「客体化」で治ることはない。コミュニケーション断絶は一度のミスマッチから起きたのではなく、数限りない繰り返しから起きたからだ。だがらともかく「客体化」の繰返しが必要である。繰り返してコミュニケーションが成り立つ状態にすることが必要である。

 父親である社長が後継者である息子に伝えなければならないことは一杯ある。特に重要なのは、創業期や厳しかった頃に、何を考え、何に拘ってきたかを伝えることである。そしてそれを話せるのは社長だけである。それが経営とは何かを考える重要なきっかけになる、だから父親と息子のコミュニケーションは極めて重要なのである。あなたは息子に会社の歴史を語っているだろうか?






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