コラム

■第1回 社内役員承継はなぜ難しいのか  北原慎一郎

ご子息が後を継がないのなら、一緒に苦労を共にしてきた社内の役員に継ごうというのは、ごく自然な発想です。
しかし、実際には社内役員に継ぐというのは、それほど簡単なことではありません。
まず、下図をご覧ください。これはある会社の事業承継チャートです。


 縦が年齢、横が年度で、創業者・会長・社長・後継者の入社以降を線グラフで表示し、社長在任期間を太い線で表しています。
 創業者は1986年72歳まで社長を務め、その時点で42歳のご子息に社長を譲られました。
 社長になられたご子息は、その後2008年(64歳)まで約20年以上社長を務められ、この時点で社内の役員に社長を譲られ会長に就任されました。
 この時、後継社長は58歳でしたが、1984年入社以来、現会長とは苦労を共にされ、互いの信頼はあつく、承継はスムーズになされました。しかし、後継社長が社長になられてから、まだ7年しか経っていませんが、すでに65歳であり、はやくも次の承継が大きな問題となっています。
 これは実際の例ですが、チャートにすると上図のようになります。この図から以下のことが分かります。

社内役員承継では、社長の片腕のように、皆が社長として受け入れる者しか社長にはなれません。そのため、親族内承継における社長交代では20~30歳も若返るのに対し、社内役員承継では10歳程度しか若返らず、社長交代が世代交代につながりません。この「10歳しか若返らない」ことが最大の問題です。
社長としてすべてを委ねるなら、株式を少なくとも50%は持たせる必要があります。しかし、10年で過半数の株式を移動させるのは至難の業です。
会長と社長の年齢差がわずか10歳でしかないということは、10年もすると、次の事業承継が必要になることを意味します。
親族内承継では事業承継は20~30年に一度の出来事ですが、社内役員承継では10年に一度の出来事であり、30年の間に3人の「社長」が必要となります

 このように、社内役員に事業を承継しようとするとき、「10年」はあまりに短い期間です。
 20年前は8割を超えていたご子息・ご子女への承継が4割に半減し、それに代わって社内役員への承継が急増していますが、社長交代はなされても、完全な事業承継まではなされていないケースが多いです。
 また、後継社長の次の後継者への承継はさらに難しさが増します。
 上図の場合、後継社長は約25年にわたり、現会長の片腕として頑張ってこられ、そのなかで経営に関する伝承がなされています。
 しかし、後継社長の次の後継者の育成期間は極めて短いです。企業が未来永劫続いていくためには、一代限りではなく、何代も事業が承継されていく仕組みを考えなくてはなりません。
 このように、社内役員への承継は、それほど容易ではありません。  まずは、自社の事業承継チャートを作成してみてはいかがでしょうか。
 「表に年度と年齢を入れると自動的にチャートを描くマクロ付きエクセルシート」を用意しています。
 まだ開発中のものですが、メール(kitahara@hjh.vm-net.ne.jp)に「事業承継チャート希望」と書いていただければ、メール添付でお送りします。まずは問題点を把握することから始めましょう。


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