【株式会社京王プラザホテル札幌】「ともに”シリワール”を育む広場」 ~SDGsを推進する合言葉~













会社概要
株式会社京王プラザホテル札幌
代表取締役社長 本田 敏人
〒060-0005 北海道札幌市中央区北5条西7丁目2番地1
電話番号:011-271-0111(代表)
URL:https://www.keioplaza-sapporo.co.jp/
SDGsの取り組み
事業(取り組み)の概要【要旨】

“シリワール” ロゴ
京王プラザホテル札幌は、“シリワール”※1 を共通言語として、大きく3 つ、地域・お客様に、環境に、そして従業員に、それぞれに寄り添うことをマテリアリティとして、SDGs に貢献しています。
1982 年の開業以来、自然災害時の帰宅困難者の受け入れや館内バリアフリー化など、様々な社会的貢献活動を行ってきました。2020 年12 月、全従業員が一丸となってSDGs への取り組みを推進していくため、「ともに “シリワール” を育む広場」 というコンセプトを策定して全従業員を巻き込み、商品や館内装飾等を通じて常にSDGs を意識して取り組んでいます。
※1 シリワールとは、“土地” を意味するアイヌ語「シリ」、“土地の個性” を意味するフランス語「テロワール」を組み合わせた造語です。北海道の様々な魅力のうち、特に、当社がお客様に是非味わってほしい、伝えたいと考える北海道の魅力のことを指します。
1.これまでの歩みの概略
当社は、幅広い国籍、老若男女、様々なお客様が思い思いに自由な時間を過ごすことのできる<広場>でありたいと考え、1982 年の開業時からその想いを受け継いできました。ホテル=宿泊施設という概念に捉われず、憩い・娯楽・交流など多様な機能を果たす都市空間の<広場>として、日々の暮らしに寄り添うホテルを目指しています。
この都市空間の中の<広場>という役割を果たすため、コロナ禍・ポストコロナを見据えて、2020 年10 月から特に重点的に取り組み始めたことが、“シリワール” の発信です。北海道には、お客様のニーズが高いものから、まだあまり知られていないものまで、農畜林水産物、文化、工芸など多様で個性的な魅力が数多くあります。それらの魅力を、愛着を込めて“シリワール” と名付けて、商品や館内装飾等を通じて日頃から積極的に発信し、改めて当社、ひいては地域に対するお客様の需要を喚起すべく取り組みを進めました。
そして、当社の果たすべき役割を一歩進め、 2020 年12 月に新たにコンセプトを「ともに “シリワール” を育む広場」と定めました。さらに、2021 年8 月に当社の事業をSDGs というものさしに紐づけて3 つの柱に整理し(図-1)、 全従業員が同じ方向を向き、常に当事者意識を持って取り組めるようにしました。
現在では、“シリワール” を、お客様、地域、当社を媒介する共通言語に位置付け、全従業員が一丸となって北海道の多様で個性的な魅力を発信しています。“シリワール” を主なきっかけとして幅広いお客様の共感や理解を得ながら、当社の利用を促進しています。このように幅広いお客様に喜んでご利用いただくこと、すなわち本業の事業活動を充実させていくことで、地域内経済循環や地域のブランド力をさらに向上させています(図-2)。
そして、たとえ小さくとも、着実に一歩ずつ地域の持続的発展に貢献し、社会と共に歩みながら、<広場>としての当社の存在価値も高めていくことができると考えています。
開業40 周年を迎えた本年は、ホテルと地域、お客様、協力会社、従業員をつなぐコミュニケーションワードとして「この先の物語も、あなたとともに。」を社内公募により定めました。このワードには、40 年の歳月を札幌の街とともに歩み、これまで本当に多くの方々に支えていただいた感謝と、これからも、新たな物語を紡ぎ、笑顔であふれる<広場>であり続けるために、一緒に“シリワール” を育みながら、より一層北海道の地域内経済循環、さらには、地域の持続的発展に貢献することに注力していくという想いが込められています。
また、コミュニケーションワードとともに、ロゴマーク(図-3)も制作しました。文字に使用したゴールドは上質で洗練された印象を与え、40 周年を迎えることの「輝かしさ・誇り」を表しています。当ホテルのロビーの雰囲気を連想させる彩色でもあります。
4 つの円の色は地域に思いを馳せ、それぞれ、「赤色=北海道の太陽、おもてなしの心」「水色=北海道の海、思いやりの気持ち」「緑色=北海道の大地、心配り」「紫色=札幌の木ライラック、心遣い」を表しています。

当社の主な社会的貢献活動の歩み
1982年 | 京王プラザホテル札幌開業 |
2002年 | 「障害者インターナショナル世界会議札幌大会」受け入れを契機としてハード・ソフト両面の本格的取り組み開始 |
札幌市「福祉のまちづくり条例適合第1 号ホテル」認定 | |
2008 年 | 割り箸から塗り箸への移行 |
廃油石鹸の使用開始 | |
2011 年 | 高効率照明器具に更新 |
2012 年 | 群管理待機電力制御機能付きエレベーターに更新 |
さっぽろ食の安全・安心推進協定 締結 | |
さっぽろエコメンバー登録事業者 最高ランクの☆3 つ獲得 | |
2014 年 | 低速待機機能付きエスカレーターに更新 |
札幌市都心地域帰宅困難者等対策協議会 参画 | |
2016年 | HACCP( 札幌市食品衛生管理認証制度)「 プレミアムステージ」の認証を取得 |
2018 年 | 北海道胆振東部地震 帰宅困難者の受け入れ実施 |
紙製ストローへの移行 | |
災害協定 締結(札幌市 ー 札幌市内ホテル連絡協議会ほか) | |
2019 年 | 原子力災害時における積丹町民の受入支援に関する協定 締結 |
2020 年 | 「HOKKAIDO LOVE!」をモチーフにしたウィンドウイルミネーションを実施 |
“シリワール” コンセプト策定 | |
「北海道の小動物」プロジェクト開始 | |
2021 年 | 紙媒体削減(客室内館内案内冊子の廃止、ホテル機関紙の廃止) |
国土交通省観光庁 観光施設「心のバリアフリー」認定 | |
2022 年 | 開業40 周年ロゴマークとコミュニケーションワード発表 |
札幌市「ワーク・ライフ・バランスplus 企業認証」最高ランク「【ステップ3】先進取組企業」認証を取得 | |
カルチャーナイト2022 に参加 | |
親子で体験型の食育イベント開催 | |
北海道の農業・水産高校と産学連携のフランス料理賞味会開催 |


2.具体的な取り組み(例)
“シリワール” 発信の根幹 <北海道、札幌という地域、お客様に寄り添う取り組み>
(1) 地域の需要の喚起
レストランやクラブラウンジで北海道ならではの料理や飲み物、スナックを提供しています。地域の農畜水産物などの需要喚起の担い手として、食材や飲み物のおいしさ、新鮮さや、料理と飲み物のマリアージュなど、北海道の風土や気候などの自然、それを生かす生産者によって生み出される魅力の数々を発信することで地域内経済循環の活性化に貢献しています。
大変希少な北海道産ワイン
① 北海道産ワイン
生産者自身で開墾した農場や、除草剤や化学肥料を一切使わずに全て手作業で行い、持続可能な農法で作る農場など、魅力あふれるワイナリー※からのおいしい自然派ワインをはじめ、 大変希少な全50 種類以上の北海道産ワインを取り揃えています。この希少なワインを楽しめるだけでなく、生産者との交流もできるイベント「ワインヘリテージ」は毎回大変好評をいただいています。また、ホテル従業員もワイナリーが持つストーリーを交え、お客様と楽しい会話を弾ませています。 ※ワイナリー:<Domaine Takahiko>や<10R WINERY> など18 社
北海道内15 の酒蔵の日本酒
② 北海道内15 の酒蔵の日本酒
ホテル内のレストランでは北海道産の新鮮な魚介とともに、上川大雪「神川」をはじめとする北海道内にある全酒蔵から仕入れた希少な地酒をご賞味いただけます。
斜里窯の携帯電話専用スピーカー
③ 北海道産の陶器
日本最北東端にある登窯窯元の斜里窯は、北海道の土を北海道の薪で焼いている、他では類を見ない焼き物です。当社では、レストランで寿司刺身用の盛皿や、客室で使用できる携帯電話専用スピーカーを使用しています。
また、同窯では甕で仕込む世界最古のクヴェヴリワイン造り用の甕も制作しており、その甕で造られた北海道産ワインも販売しております。
(2) 生産者との連携
ハロウィン装飾のかぼちゃの収穫
提供している料理の食材や北海道産ワイン、ハロウィン装飾に使用するかぼちゃ※などの仕入れは、総支配人や企画調理、接遇にあたるサービス担当が直接産地に出向き、生産者との信頼関係を結びながら行っています。
また、ワインや日本酒の生産者を招いたメーカーズディナーの開催など、お客様と生産者の接点も提供し、大変ご好評をいただいています。 ※かぼちゃ: 砂川市「片桐農園」
(3) 地元企業・病院との連携
「 丸美珈琲店」のコーヒーと
「札幌焼盤渓窯」のコーヒーカップ
札幌で自家焙煎のスペシャルティコーヒーを扱い、長年札幌のコーヒー文化を牽引する「丸美珈琲店」や深い色合いが特徴の食器などを手掛ける「札幌焼盤渓窯」のコーヒーカップを使用するプランの造成など、地元企業との連携を深めています。
また、当社近隣の「斗南病院」との低カロリー・減塩の身体に優しい特別コラボレーションメニューの開発も行っており、ホテル館内のレストランで提供しています。お客様からは、「おいしいし、しっかり量があるから、お腹いっぱい食べられて嬉しい」とのお声をいただいています。
(4) イベント企画と参画による地域活性化
さっぽろ雪まつりに出品した氷像
ホテル近隣のお客様にお楽しみいただくイベントの開催や、客室を利用したコロナ禍の地域の皆様への応援メッセージの発信のほか、地域イベントへの参画、デコレーターシェフの派遣などを通して地域の活性化に取り組んでいます。
新入社員が実施した
ウインドウイルミネーション
<イベント例>※現在は中止しているイベントもございます。
・お子様を対象としたハロウィン謎解きイベントの開催
・「HOKKAIDO LOVE」ウィンドウイルミネーション実施
・鉄道模型の展示や運転体験イベントの開催
・さっぽろ雪まつりへのデコレーターシェフ作品(氷像)の出品
・カルチャーナイトへの参画(協賛)
調理実演の見学
<2022 年度開催のイベント>
・親子で体験型の食育イベント開催
ホテルシェフによる調理実演、地元産食材のレクチャーとフランス料理フルコースのテーブルマナー講習という普段はなかなかできない食体験を企画しました。
シェフと直接会話を重ね、目の前で様々なプロの技をご覧いただいたお子様からは「かっこいい」という歓声があがりました。さらに、保護者からも「大人も楽しめた」というお言葉をいただきました。
農業高校視察時の総料理長と
若き“生産者”
高校産の食材を使用した特別メニュー
・北海道の農業・水産高校と産学連携イベント開催
北海道内各地の農業高校が育てた農畜産物、及び水産高校が水揚げ、加工した水産物を使用したフレンチの特別メニューの賞味会を開催しました。
各農業高校では農業生産において、食品安全だけでなく、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組である「GAP 認証」を取得し、 将来の担い手を育成し、一次産業の持続可能性の確保に努めています。
イベントの前には、総料理長や企画の担当者が各高校へ訪問し、教職員および若き“生産者” と強いパイプを構築できました。今後も継続的に連携していく方向で検討しています。
このように、産学連携の推進を通じた北海道の農畜水産業の持続性向上の支援をしています。
・SDGs 体験型ワークショップイベント開催
本来なら捨てられるはずの廃材に新たな価値を与え、シマエナガのオブジェを制作するアップサイクルという SDGs アクションの体験イベントを開催しました。動画をまじえてホテルのデコレーターシェフが丁寧に説明し、参加者の皆さんと一緒に地球環境に配慮したモノづくりの楽しさを通してSDGs に貢献しました。
参加者の皆さんへのレクチャ―風景
廃材からオブジェになる過程の展示
備蓄している非常食
(5) 自然災害・非常時の安全と安心確保
災害・非常時の対応を学ぶ社内講習や普通救命講習、避難訓練を定期的に実施しています。
また、従業員への安否確認システムを構築するとともに、72 時間分の蓄電、非常食と飲料水の備蓄により、非常時に備えています。
(6) ホテル全館バリアフリー化
電動リクライニングベッドを完備し、スライド式のドアなど、車いすのお客様でもご不便なくお過ごしいただけるよう設計したアクセシブルルームやユニバーサルトイレを設置しています。
2002 年に札幌市福祉のまちづくり条例に定める基準に適合し、障がいのある方・高齢の方等に利用しやすく整備されている建築物として札幌市内のホテル第一号として認定されました。
また、聴覚障害のあるお客様とのタブレット端末を用いたコミュニケーションや介護用品の貸し出しなどの取り組みが評価され、2021 年9 月に国土交通省観光庁より、観光施設「心のバリアフリー」認定を受けています。(2022 年10 月現在、札幌では当社を含め10 施設)
リクライニングベッド完備の
アクセシブルルーム
札幌市福祉のまちづくり条例適合ホテル
認定ロゴ
観光施設「心のバリアフリー」認定証
“シリワール” を育む基盤 <地球規模の環境や愛すべき北海道の自然に寄り添う取り組み>
(1) 環境に配慮した素材への移行
地球温暖化や海洋プラスチックごみ等に対する環境保全の取り組みとして、ストローや箸を環境に配慮した素材のものに移行しています。
紙製に移行したストロー
① 紙製ストローへの移行
京王プラザホテルチェーンで年間約43 万本のプラスチックストローを使用していましたが、プラスチックごみ削減のため2018 年より紙製ストローに移行しました。
② 塗り箸への移行
レストランや宴会場で年間約70 万膳の割り箸を使用していましたが、森林保護のため、2008 年より洗浄して何度も使用できる東京・日本橋にある老舗〈川上商店〉製の塗り箸に移行しました。
天然地下水を使用したプール
(2) ホテル館内の上水に天然地下水を使用
豊平川扇状地にある札幌は日本でも屈指の地下水が豊富な地域といわれています。水質も極めて良好で飲料用にも適しており、水温は10℃程度のため冷房にも利用可能です。
開業時からこの地下水を上水・雑用水とも市水代替えの取水源として、飲料水はもちろん、空調設備やプールなど最大限に利用し省エネルギー化を図っています。
パンフレット設置棚を廃したラック
(3) 紙媒体の削減
年間約6 万部発行のホテル機関紙や493 室ある客室内に設置していた館内案内冊子を廃止し、さらにはポスターや各種パンフレットなどの紙媒体を削減しました。ホテルホームページや客室内テレビ、デジタルサイネージを活用したご案内に移行しています。また、従業員の給与明細も、封書を廃止し電子化しています。
紙資源の廃棄量の削減に加え、インクなどの材料生産や輸送にかかるCO₂も削減しています。
(4) 省エネ対応型の器機の使用
2012 年に、利用頻度に応じてスリープモードに移行させて消費電力を大幅にカットする群管理待機電力制御機能付きのエレベーターに更新、さらに2014 年には、ご利用がないときには自動で低速運転に切り替わるエスカレーターに更新いたしました。また、バックヤードの照明器具にも高効率照明器具や人感センサー付き照明を導入しております。
(5) “北海道の小動物” プロジェクト
北海道の魅力の一つとして、可愛らしい小動物をテーマに「癒し」を提供するべく、部門を横断した専属プロジェクトを立ち上げました。北海道在住の写真家にご協力をいただきながら、これまでに、のべ約1,000 名にご利用いただいた「雪の妖精」シマエナガのコンセプトルームをはじめ、ケーキ、ランチコース、カクテルやエコバッグなどの商品造成をしてまいりました。
さらに加えて、季節に合わせアレンジを変更する館内の装飾にも、SDGs アクションのひとつである、廃材に新たな価値を与え、新しいものを制作するアップサイクルをしたシマエナガオブジェや、北海道の野草を用いて作ったドライフラワーを散りばめています。北海道の隠れた魅力を発信するこの取り組みは、これまで地元を中心に各種メディア23 媒体、50 を超えるメディア露出をしています。SNS 等を通じ大変多くのご反響をいただいており、地域の需要喚起に大きく貢献しております。
また、この取り組みには、小動物たちの可愛さをきっかけに、あらゆる動植物を育む北海道の豊かな自然環境やエネルギー、歴史、文化などその素晴らしさへの興味・関心を喚起していきたいという想いも込めています。
シマエナガのコンセプトルーム
販売開始後3 時間で完売した
シマエナガクッキー缶
シマエナガのエコバッグ
シマエナガのミニランチ
シマエナガのフォトスポット
北海道の小動物プロジェクト
会議の様子
廃材をアップサイクルした小動物
オブジェで装飾したクリスマスツリー
小動物オブジェや写真パネルを展示した
「北の小動物ギャラリー」を開設
廃材を使用した小動物のオブジェ
のメイキング風景
“シリワール” の発信の要 <ホテル事業を継続する上で要となる従業員に寄り添う取り組み>
(1) 働きやすい環境の推進
従業員が子育てや介護など様々なライフイベントを経験しながら、働きやすい環境づくりを推進しています。
① 事業所内保育所
札幌市の子ども・子育て支援新制度における地域型保育事業の一つで、企業が事業所の従業員の子どもに加えて、自治体の認可を受けて地域の子ども達にも施設を提供する「事業所内保育所」をホテルに隣接して完備。子育てをしながら働ける環境を確保し、充実した家族生活をサポートしています。(2021 年度:対象従業員の利用率=約22.2%)
② 育児・介護休暇制度、時短勤務制度
育児や介護による休職や、時短勤務の制度を整えています。(2021 年度:育児休職12 名の取得)
③「ワーク・ライフ・バランスplus 企業認証」を取得
「ワーク・ライフ・バランスplus 企業認証」とは、仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組む企業を札幌市が認証する制度です。2022 年5 月、当社は札幌市内のホテルで唯一、最高ランクである「先進取組企業(法令を上回る取組を行っている企業)」として、認証を受けました。

(2) 従業員食堂の自営化
業務委託していた従業員食堂の自社運営を2021 年1 月よりスタートしました。洋食・製菓など様々なジャンルで幅広い年代の従業員が働いており、若手を中心に調理技術の研鑽に努めております。
また、レストランや宴会場で仕入れ、販売用に調理しきれなかった食材を活用することで食品ロスに対応し、効率的な在庫管理を行っています。
(3) 全従業員参加型の「アイデア立案→商品化・サービス改善」の委員会でスキルアップ
若手からベテランまでキャリアの長短に関わらず、積極的に意見を出し合い、商品化やサービス改善に活用する委員会(Marketing Strategy Board 通称:MSB)を発足しました。
2022 年からは各部署の若手従業員を中心メンバーに据えて活動をしています。自らのアイデアが商品化やサービス改善に活かされることで、従業員のモチベーションアップにつながるほか、企画立案や検討の実践の中でマーケティングやコミュニケーションのスキルアップの場となっています。
事業(取り組み)の実施に当たっての課題とその克服の経緯
“シリワール” という耳慣れない言葉や考え方をどのように社外に周知していくか、そしてそのためにはどのように社内に浸透させていくか、課題を抱えていました。
お客様には“シリワール” という単語を覚えていただくというよりは、「北海道の魅力を様々に発信しているホテル」というイメージを持っていただくことを目的に、“シリワール” のブランディングをはじめました。
まず、実務にあたる現場の従業員だけでなくバック部門の従業員など全社でこの取り組みについて興味・関心、理解度を上げ、お客様や協力会社などとの接点でしっかりと伝えられるようにする必要がありました。しかし、これまでの社内浸透策は、イントラネットや掲示板に掲出するのみで、「他部門がどのような施策をしているかを知らない」など、PC やモバイル端末を持たない現場の従業員をはじめ、結果的にほとんどの従業員の興味・関心を引き付けられず、今一つ成果が上がりにくくなっていました。
そこで、“シリワール” を、全従業員を媒介する共通言語と位置付け、より多くの現場の従業員を巻き込める方法で実施しました。
<“シリワール” ブランディングの経緯>
(1) コンセプトの策定
はじめに、ホテルのコンセプトとして「ともに “シリワール” を育む広場」を策定しました。コンセプトは、ある商品を売るためにお客様へ向けられたメッセージのような扱われ方がされがちです。しかし、このコンセプトには、お客様だけでなく、地域や私たちホテル従業員も含め、皆で進めていきたいという想いを込めており、コミュニケーションワードのような意味合いがあります。
(2) ロゴマークの制作
イラストの得意な従業員に“シリワール” のロゴマークを数パターンデザインしてもらい、興味や関心を引くために全従業員参加型の「ロゴマーク総選挙」を行って決定しました。
決定したロゴマークのピンバッヂを作り、すべての従業員に着用させたほか、ロゴ入りの名刺も使用することで、常にひとりひとりが、“シリワール” の発信に関わっているという意識付けをさせました。ロビーや各レストラン店舗前のデジタルサイネージでもロゴマークを使用して、メニューなど各レストランでの取り組みを紹介するようにしました。

“シリワール” ロゴ
(3) オリジナルキャラクターの制作
ロゴマーク同様、イラストの得意な従業員に、小動物プロジェクトの取り組みで大反響のシマエナガのオリジナルキャラクターが、ロビーやバーテンダーなど当社の各所のユニフォームを着用したイラストをデザインしてもらい、缶バッヂにしてすべての従業員に着用させました。
特に日頃接客にあたる従業員には、可能であればこのバッヂをきっかけにお客様との会話につながってほしいという意図があります。実際にお客様からは、「シマエナガですよね?ホームページで見ました」「スタッフの皆さんも付けていらっしゃるのですね。かわいい!」などのお声もいただき、従業員との会話につながっています。
(4) 商品開発への多様な従業員の参画
スキルアップや、興味・関心、当事者意識を喚起する意味合いも含め、20 ~ 30 代の次世代、 接客や調理に携わる多くの従業員をプロジェクトなどで商品開発に参画させました。
北海道産食材・料理の新たな楽しみ方を随所に提案するブッフェとして朝食をリニューアルした際や、シマエナガなど小動物に関するレストラン商品の試作発表時など、従業員の意見から、よりお客様のニーズに合うように開発・調整をしました。
(5) “シリワール” 通信の配信
北海道産の食材や小動物など、北海道の魅力を活用した商品を開発した際は、社外に“シリワール” ロゴ入りのプレスリリースを配信しています。
社内には「“シリワール” 通信」という形でプレスリリースとほぼ同じ内容をイントラネットと掲示板で配信・掲出をしています。
(6) “シリワール” 説明会の実施
「“シリワール” って意味が分からなくてGoogle で検索しちゃったよ」
当初はそのような声も館内各所で聞かれました。
そこで全従業員の理解度をより上げるために、説明会を開催しました。説明会では、言葉の意味だけでなく、なぜ取り組むのか、取り組んで何を目指すのか、今後具体的にどのように取り組んでいくのかを一から説明しました。
以上のようなステップで進めてきた結果、従業員同士の会話の中でも“シリワール” という言葉が聞こえてきたり、商品開発の際は必ず“シリワール” を意識するようになっています。
また、「京王プラザホテル札幌」と検索すると予測ワードで「シマエナガ」と出てきたり、朝食に関するアンケートやOTA 等の口コミでは「北海道を感じられた」などのコメントもいただいており、社外にも徐々に浸透し、「北海道の魅力を様々に発信しているホテル」として認知されてきています。
事業(取り組み)の先進性や社会的貢献度
1. 取り組みの先進性
地域の魅力の発信というと、市内の同業他社を見渡しても地域の農水産物など地元食材を使用した料理の提供であるケースが多いようです。
しかし、当社は料理の提供だけにとどまらず、他社では手掛けていない小動物やコーヒー文化、工芸、生産者との連携によって調達可能になった大変希少なワインなどにまで手を伸ばして他社に先駆けて発信してきました。現在では当社を利用するお客様の年齢層は20 代~ 30 代の若い世代も徐々に増えて非常に幅広い年代になってきています。また、SNS 等を通じて北海道外のお客様の認知も広がり、北海道の魅力は年代や地域性の枠を超えてリーチしています。
※公式Instagram フォロワー数:3,433 (2022 年11 月末現在) 取り組み開始前と比べ約170%
2. 取り組みの社会的貢献度
(1)特に反響の大きい企画・商品
“北海道の小動物” プロジェクト
小動物たちの可愛さをきっかけに、地域の需要や地域の自然環境への興味・関心を喚起しています。
①商品の反響
コンセプトルーム | のべ775 室 1,396 名(2021 年1 月~ 2022 年11 月実績) |
レストラン・バー | ピースケーキ5,084 個 ロールケーキ2,396 個 ランチ4,461 食 |
カクテル345 杯(2021 年1 月~ 2022 年11 月実績) |
②メディアの反響
TV、新聞を中心に雑誌、ラジオ、Web メディア等23 媒体、約50 件のメディア露出(2021 年1 月~ 2022 年11 月実績)
朝食ブッフェ
北海道産食材・料理の新たな楽しみ方など、北海道の魅力を訪ねる旅のようなひとときをご提案し、地域の需要喚起や地域内経済循環に貢献しています。
①喫食率
コロナ前56.3%⇒2022 年度(11 月までの実績)66.9%(+10.6pt)
②メディア等の反響
複数のランキングサイトで札幌市内ホテルTOP10 入り、内2 サイトで1 位を獲得
(2)環境保全
ストロー | 年間約56,000 本のプラスチックストローを紙製へ移行 |
箸 | 年間約70 万膳の割り箸を塗り箸へ移行 |
天然地下水 | 揚水量2,000 ㎥/日 2 基 |
客用エレベータ | 電力消費量約41.3%低減 |
業務用エレベータ | 電力消費量約25 ~ 30%低減 |
高効率照明 | エネルギー削減量1.3% CO₂削減量1.3% |
3.今後の取り組み
以上のような先進性や貢献度から、当社はいわば「年代や地域性の枠を超えてリーチできる北海道の魅力の発信基地」としての役割を担って、北海道内外からお客様を呼び込み、その地位を確立していると言っても過言ではありません。
引き続き皆様にとっての<広場>であり続けるべく、社内啓蒙を続け全従業員の理解度を高めて参ります。また、取り組みの旗振り役を努める社内組織体制を構築し、中期的には、取り組みの目標値を定め、当社におけるマテリアリティの共有を促し、パフォーマンスの向上を図っていきたいと考えております。そして、今後も“シリワール” を発信し続け、幅広い年代、地域からお客様の当社の利用を促進することで、地域内経済循環や地域のブランド力を向上させ、地域の持続的発展に貢献してまいります。