8/5 札幌市への要望(詳細)
東日本大震災を踏まえた景気対策と災害に強い街づくりの推進について
回答

(1)官公需に係る事業量の確保など更なる景気対策の実施

社会資本整備の方向性が新設・拡張から維持・補修へとシフトしつつある中、安全安心と質の高い暮らしの実現に向けて、既存橋梁の耐震補強工事や歩道のバリアフリー化、市有建築物の耐震化など、様々な取組みを進めており、今後も積極的な展開を図るとともに、これらを地元中小企業に対する受注機会の拡大につなげていきたいと考えている。

平成23年度予算においては、依然として厳しい地域経済の状況を踏まえて生活道路、保育所整備といった生活に密着した施設整備に加えて、市有施設の耐震化など震災を踏まえた整備費を計上したところであり、今年6月の肉付予算後の建設事業費全体では、昭和63年度以降最大の伸びとなる対前年度比10.5%増の総額736億円となり、地元企業の受注拡大にも資するものと考えている。

また、当該補正予算では、1次事業者と2・3次事業者とのマッチングを進め新製品開発等を促す「6次産業化」の取組に対する支援や、求職者への資格取得や職場実習の場の提供、さらには事業主への雇用助成の創設等の経済対策についても計上している。

震災の影響など財政運営の見通しが不透明な中、市内の経済状況を注視しながら、必要な事業の確保について、今後とも配慮してまいりたいと考えている。

(2)災害に強い街づくりの推進

収容避難場所となる市有施設について、今後とも、学校などを中心として、重点的、かつ、これまで以上にスピード感を持って耐震化に取り組んでまいりたいと考えている。

また、収容避難場所の寒さ対策として、補助暖房の充実や防寒用品の備蓄増強、更には、学校体育館の高断熱化に関する検討などを進めてまいりたいと考えている。一方、災害時における生活物資・飲料水・燃料・医薬品等の供給、物資の搬送、広報印刷物の発行などについては、様々な業種の企業や業界団体と協定を締結するなどして民間企業等との連携を積極的に図ってまいりたい。

さらには、この震災を契機としたリスク分散の動きに対しても、積極的に情報収集を行い、必要な対応を検討してまいりたいと考えている。

地元中小企業の受注機会拡大と入札制度の改善について
回答

(1)地元中小企業に対する優先発注

官公需法の理念に基づき、依然として厳しい地場経済の状況を踏まえ、競争性を阻害しない範囲において、可能な限り地元建設業者、とりわけ中小建設業者の入札参加機会を増やすなど、地元建設業者の受注機会の確保に配慮しているところである。

また、地域に貢献してこられた企業に対する優遇措置として、総合評価落札方式において除排雪事業への従事や災害防止協力会への参加を地域貢献の加点対象とすることや除排雪事業に従事している企業のみを対象とした入札制度を実施するなどの取組みを行っており、今後とも、地元中小企業の受注機会の拡大に配慮してまいりたい。

(2)最低制限価格ならびに低入札調査基準価格の引き上げ

緊急経済対策の一環として、一昨年6月に続いて、昨年2月にも、最低限価格の引き上げを行っている。平均落札率は、平成21年度と22年度の工事全体の比較で約3ポイント上昇しており、引き上げによる一定の効果が表れていると認識している。

今後とも、落札率の推移等を見極めていくとともに、今年度中に制定を目指し検討している公契約条例と併せて検討を進めてまいりたいと考えている。

また、ダンピング対策として、最低制限価格同様、低入札価格調査制度における失格判断基準の引き上げを行うとともに、今年度からは、WTO政府調達協定対象工事についても新たに低入札価格調査制度における失格判断基準を適用したところである。

(3)警備、ビルメンテナンスに係る入札参加要件の厳格化

建物の清掃や警備業務については、政府調達適用案件を除き指名競争入札を行っているが、入札参加者の資格(指名)要件については、業務の履行確保を第一に競争性や公平性を勘案しながら設定している。入札参加要件の厳格化については、関係団体からのご要望事項も参考にさせていただき、より一層の業務の履行確保や公平性が図られるよう検討してまいりたい。

(4)印刷に係る最低制限価格制度導入

地方自治法施行令第167条の10第2項では、「当該契約の内容に適合した履行を確保するために特に必要があると認めるとき」には、最低制限価格を設定することができることとされている。印刷物の発注については、「自社の設備で印刷が可能であること」を入札参加条件として履行の確保に役立てているところであり、現状において、印刷物については適正な納品がなされていることから、最低制限価格を導入する状況にないと考えている。

(5)新基幹系情報システムの地元中小企業への発注

地元IT企業の参入機会の拡大は新基幹系情報システム構築の目的の一つであり、発注にあたっては、発注単位の細分化や地元企業を入札参加要件とすることで地元企業の受注機会の拡大を図っている。また、必要となる技術の習得を目的とした研修会を開催し、地元企業の技術力向上に努めるとともに、地元金融機関では受注企業向けに有利な条件で貸付を行うなど資金面においても受注しやすい環境が整ってきている。今後は開発後の保守業務も含め、可能な限り地元企業の参入が拡大されるよう配慮してまいりたい。

北海道新幹線早期札幌延伸をはじめとする総合交通体系の確立について
回答

(1)北海道新幹線の早期札幌延伸

札幌市としても、北海道新幹線札幌延伸の実現に向けた重要な局面を迎えていると認識しており、7月には上田市長が道内沿線自治体の首長と合同で国土交通大臣をはじめとする関係国会議員への要望活動を行ったところである。

また、延伸によって北海道・東北に生まれる新たな経済圏が我が国の経済発展を牽引することが期待されることから、東北地方の自治体との連携は大変重要であると考えており、昨年4月には札幌市の呼びかけにより、北海道・東北の新幹線沿線19自治体の首長が一堂に会し、「今後とも緊密な連携を図りながら、実践的な取組みを進めていくこと」を合意したところである。

札幌への延伸は北海道のみならず東北地方の発展にも寄与するものであり、東日本大震災被災地の復旧・復興状況にも配慮しながら、機会を捉えた連携に務め、様々な誘致活動を展開してまいりたいと考えている。

(2)都心部と高速道路のアクセス強化

都心部と高速道路のアクセス強化は、観光交流や物流の円滑化を促進するとともに、高度医療施設をはじめとする様々な都市機能が集積する札幌市の強みを活かし、北海道の中心都市としての機能をより高めるといったことが期待されるものと考えている。

このことから、今年度の策定を目指して、現在、検討中の「札幌市総合交通計画」において創成川通を「都心アクセス強化道路軸」として位置付け、道路管理者である国等の関係機関と連携し、検討を行ってまいりたい。

(3)冬季の円滑な交通の確保に向けた除排雪対策の徹底

世界でも稀な多雪大都市である札幌市にとって、除排雪は冬季の安全・安心な市民生活を確保するとともに、と市の経済活動を支えるための重要な施策である。このため、厳しい財政状況の中にあっても、平成23年度の道路除雪費は対前年比99.8%の約113億円を確保しており、除雪水準の維持に努めている。

しかし、長引く不況や少子高齢化の進展など社会経済情勢の影響から、除排雪事業の主な担い手である建設業の倒産や廃業による撤退の増加など、札幌市の除排雪事業を取り巻く環境は厳しさを増している。

そのため、今後は、事業の効率化と一般幹線道路における排雪量の抑制などメリハリをつけた事業展開を行っていくとともに、除雪に支障となる路上駐車の防止など市民・企業との協働による取組みを推進することにより、引き続き冬季の円滑な交通をしっかりと確保してまいりたい。

中小企業の育成・振興策の拡充による経済活性化について
回答

(1)創業支援施策の拡充強化と当所との連携促進

札幌市では、札幌商工会議所の他、経済センタービル内の3つの中小企業支援機関(日本政策金融公庫、北海道中小企業総合支援センター、札幌市中小企業センター)による連絡会議を今年5月に立ち上げ、創業支援策をはじめ様々な中小企業支援策について、効果的かつ効率的に実施することを目的とした連携強化に向けて協議を重ねている。

また、札幌商工会議所とは、これまでもアジアを中心とした商談会の開催などを連携して行ってきており、今後は、地域ブランドの推進や農商工連携などにおいても、様々な形で連携、協力を図ってまいりたいと考えている。

(2)地産地消、域内循環促進の強化

札幌市は平成21年に「北海道の食を愛するまち」を宣言し、地産地消の取組を進めることとしており、「さっぽろハーベストランド」や「さっぽろスイーツ」といった食ブランドの創出・発信を図るとともに、北海道の食に関する情報を発信するウェブサイトを開設するなど、道産食品に対する市民の愛着を高め、さらなる消費を促しているところである。

また、今年度は、さっぽろ産業振興財団にコーディネーターを配置して道内の一次産業と札幌の食料品製造業等との連携を促すなど、北海道経済の中心都市として札幌が道内市町村との連携を図ることで、今後とも、より一層域内循環を促進するとともに、域外需要の開拓に向けた取組みも推進してまいりたいと考えている。

(3)MICE誘致促進

平成22年度に策定した「札幌MICE総合戦略」では、今後5年間の方向性として、MICE開催地としての札幌の地位を確立するため、人材育成に力を入れるとともに従来からのコンベンション誘致に加え、企業の報奨旅行の誘致促進などを通して、札幌におけるMICEの質的向上と量的増加を目指すこととしている。

人材育成面では地域雇用推進事業(パッケージ事業)にMICE分野を位置づけ、23年度からの3年間で関連業界において100人超の人材を育成することとしている。誘致強化策としては、23年度肉付予算において、北京市に担当職員を配置するなどにより中国国内のネットワークを整備し、企業の報奨旅行誘致への取り組みを強化しているところである。

また、韓国大田市コンベンションビューローとの共同による見本市への出展や官民一体となったMICEおもてなし月間の開催など様々な取組みを行っているところであり、今後も官民共同による展開を図ってまいりたい。

(4)地域雇用安定化への取り組み強化

札幌市では、これまでも地域雇用の安定に向け、就業サポートセンターをはじめ、各区に職業相談の窓口を設けるなどの取組を行ってきている。これらに加えて、今年度は、札幌商工会議所など10者で構成する「さっぽろ雇用創造協議会」を今年2月に設立し、平成23年度から3か年にわたる地域雇用創造推進事(パッケージ事業)を厚生労働省から受託したところで、地域の産業振興施策と連動した産業人材の育成と新たな雇用創出へ向けた事業を実施している。

また、25歳から34歳までの若年求職者の就業を促進するため、札幌市産業振興ビジョンで定める重点4分野(「食」、「観光」、「環境」、「健康・福祉」)の中小企業を対象として、1人の正規雇用につき20万円の助成金を支給する事業を今年8月より開始するなど、今後とも地域雇用のさらなる安定化に取り組んでまいりたいと考えている。

(5)公共施設への新エネルギーやBEMSの導入、次世代自動車向けインフラ整備など札幌版グリーンニューディールの実施

札幌市では、平成20年10月に「札幌市公共施設における省エネルギーの推進及び新エネルギーの導入要綱」を制定している。新エネルギーの普及拡大等に向けては、昨年度市有施設8カ所をはじめ市内各学校36校に太陽光発電を設置するなど、計画的に取り組んでいる。

また、地球温暖化対策を推進するため、市内のCO2総排出量の1/4を占める自動車への対策としてエコドライブや次世代自動車の普及に努めている。

次世代自動車の普及にあたっては、今年7月、車両導入に対する補助制度を創設するとともに各種イベント等において車両展示を関係事業者と行っているほか、併せて燃料供給設備の増強についても関係事業者に働きかけており、今年4月には、市民、中小企業者向けの環境保全資金融資あっせん制度の対象設備として燃料供給設備を追加したところである。

このほか、平成20年度から「札幌・エネルギーecoプロジェクト」として太陽光発電をはじめとした、新エネルギー、省エネルギー機器を導入する市民・中小企業者等に対し支援制度を設けており、今後も引き続き導入促進を図ってまいりたいと考えている。

規制緩和による民間活力活用の推進について
回答

(1)建物の「高さ制限」及び「容積率」(特に都心部)の大幅な緩和

(2)「高さ制限・容積率特例」における上限の更なる引き上げと許可・認定のルール明確化

土地利用計画制度については、市民生活や企業活動など都市における様々な活動に関係する制度であることから、現在行っている用途地域等の全市見直しにあたっては、札幌商工会議所はじめ各種関係団体や市民意見を伺いながら検討を進めているところである。

高さ制限や容積率の緩和については、都市づくりをより戦略的に進め高質な市街地の形成を図るため、一律的な緩和ではなく、都心や高度利用住宅地においての都市機能の向上に資する計画に対して容積率を緩和するなど、地域特性に応じた誘導型の緩和を主体とする柔軟な運用を検討している。

なお、緩和制度については、これまで以上に活用されやすいものとするため、客観的でわかりやすい制度設計に留意してまいりたい。