空き家対策コラム
「空き家の管理」と「空き家を生み出さないための方法」とは
札幌市都市局建築指導部建築安全推進課・監察担当課長 平田 成秀

1 はじめに
「あなたは空き家をお持ちですか?」
あなたはこの質問にどのように答えるでしょうか。
「持っている」と答えた方は本稿をお読みいただいて、空き家の適切な管理に努めてください。
「持っていない」と答えた方も是非最後までお読みください。もしかすると、あなたも知らないうちに空き家の所有者になっているかもしれません。
 
2 空き家が引き起こす問題
増加する空き家が社会的な問題となっていますが、実は空き家を所有していること自体は問題ではありません。問題は空き家を適切に管理せずに、放置してしまうことです。放置された空き家は、傷みが早く、みるみるうちに劣化し、最悪の場合、人や建物に危害を加えることになるかもしれません。
少しくらい放置しても建物がすぐに傷むわけではないし、たとえ傷んだとしても空き家は個人の財産なのだから、管理をしてもしなくても個人の自由だろうと思う人がいるかもしれません。しかし、そんなことはありません。
本市では、空き家についての相談を受け付けていますが、その多くが自宅の近くにある空き家について何かしら不安があるというものです。
どんなことが不安なのかというと、「鍵がかかっていなくて、不審者が侵入するのではないか心配」、「草木が生い茂っていて迷惑」、「放火されそうで怖い」といったものです。これらは、建物の老朽化による不安ではなく、適切に管理されていないことによる不安です。
さらに、空き家を放置することは犯罪のリスクを高めます。放火や不審者の侵入の恐れが高まり、地域の防災性・防犯性が低下し、最終的に治安の悪化を招くといったように、空き家だけの問題ではなくなるのです。
建物が傷んでいないから大丈夫というわけではないのです。所有者が思っている以上に地域の人は空き家を心配しており、空き家は地域に不安を与えているのです。
また、老朽化した空き家は、前述の犯罪のリスクに加え、建物の倒壊などで周囲に被害を及ぼす可能性があります。空き家が被害を与えた場合、空き家の所有者が管理責任を問われることとなり、多額の損害賠償を求められることもあるかもしれません。
個人の財産だから自由にして良いというわけではないのです。個人の財産だからこそ、所有者は自分を守るためにも、空き家を適切に管理していかなければならないのです。
 
3 行政の関与
本市では、このような空き家に対して、所有者に情報提供や指導を行い、適切な管理を促しています。ただ、管理をするにも費用や手間がかかるため、すぐに対応してもらえることは極めて稀です。そのため、粘り強く対応しています。
最近では、行政が空き家を解体する報道を目にすることがありますが、前述のとおり空き家は個人の財産であるため、その実施には高いハードルがあります。本来、個人の財産はその個人が管理すべきであり、税金を投入した解決には慎重な判断が必要になります。しかし、市民への危険が差し迫っている場合には速やかな対応が求められるため、その判断が非常に難しいと感じています。
 
4 空き家の管理
では、どのように空き家を管理していけばいいのでしょうか。
まずは、しっかりと点検をしましょう。それも一度ではなく、定期的な点検が必要です。住んでいれば、すぐに建物の変化に気付くことができますが、住んでいない場合は、定期的に点検をしないとその変化に気付くことができません。大雨・大雪や地震などの後は、建物に変化が起こりやすいので、点検をすべきでしょう。
空き家と現在の住居が離れている場合は、民間事業者に管理を委託することも考えられます。空き家の不適切管理の問題が注目されてから、空き家の管理を請け負うサービスを行う民間事業者が増えています。
また、周囲の方に連絡先を伝えておくことも大切です。周囲の方と良好な関係を築くことで、万が一の際に連絡をもらうことができ、最悪な状態を回避できます。
住む予定がないのであれば、思い切って賃貸や売却も考えられます。空き家は放置してしまうと劣化が早いので、資産価値の高いうちに判断すると効果的です。本市にご相談いただいた場合は、協定を結んでいる不動産事業者団体をご紹介いたします。不動産事業者から、状況に応じたアドバイスをもらえることでしょう。また、賃貸や売却にむけては北海道が運営している空き家情報バンクを活用することもできます。
手間や費用がかかるとしても、住む予定のない家に対して管理責任を負い続けるよりは、このような活用を考えた方が良い場合もあります。
 
5 空き家に対する指導上の問題
本市では、空き家の所有者へ適切な管理について指導を行っていますが、登記上の所有者が亡くなっていることがたびたびみられます。その際は相続された方を探していくことになり、配偶者・子・孫・親・兄弟など相続の可能性があるすべての方を調査し、相続人を特定していきます。本市が接触して初めて、空き家を相続したことを知る方が多くいらっしゃいます。例えば、離婚した親の兄弟(叔父・叔母)が住んでいた建物を知らないうちに相続している場合もありました。どんなに遠い親戚からであっても、相続した後は管理責任が発生します。
また、相続人が多数存在すると、空き家の対処が困難になります。相続人が多いほど、空き家の対処についての方針がまとまりにくくなり、放置する割合が高くなるからです。
これは、建物を使用している所有者やその親族の方の問題です。もし、所有者が亡くなった場合に、その建物をどうするかを親族で話し合い、できる限りの整理に努めてください。そして、知らないうちに空き家の所有者になっていたということを防ぐためにも、親族からの「相続」と聞いて思い当たる土地や建物があれば、誰の名義になっているかを把握し、すでに相続している又は今後相続する可能性がないかを、親兄弟が健在であるうちに確認しておくことをお勧めいたします。
冒頭の質問に「空き家を持っていない」と答えた方も、ここまでお読みになって思い当たる土地や建物はありませんか。
なお、相続に関することで疑問等がある場合には法律の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。本市でも、無料の相談窓口を開設しておりますので、是非ご活用ください。
 
6 最後に
空き家をお持ちの方は自分自身を守るためにも、適切な管理をお願いいたします。また、今は空き家をお持ちでない方も、世代交代や移転等により空き家となることがあります。現在所有している建物や親族が所有している建物が、今後も適切に管理されていくよう、相続後の整理などについて早めの準備をお願いいたします。